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バイブコーディングの先:マルチエージェント調整と「作ったあと」の仕事

自然言語でアプリを一気に立ち上げる話の次は、複数のエージェントを並列で動かし、成果物を検証する側へ移っている。ただし市場シェアがそちらへ「急上昇」したと示す数値は確認できなかった。

バイブコーディングとは、自然言語で意図を伝え、AIにコードを書かせるやり方だ。Andrej Karpathyが2025年に広めた表現で、2026年4月20日のSequoia CapitalのAI AscentでStephanie Zhanと交わした対話では、さらに踏み込んだ。バイブコーディングが誰でもソフトウェアを作れる下限を上げるなら、エージェンティックエンジニアリングは品質・セキュリティ・保守性を保ちつつAIエージェントを調整する開発のやり方だ、という区分である。ここでいうAIエージェントとは、ユーザーの代わりに複数の手順を自分で進めるAIのことだ。

業界では「立ち上げ」(ゼロから一)と「作ったあとの仕事」を分けて語ることもある。前者はプロトタイプを素早く立ち上げること、後者は大規模リファクタリングや移行、UIの一貫性、コードレビューのように、既存システムを安全に変えることだ。この対比はKarpathyやAnthropicが固定した用語ではない。

バイブコーディングからエージェンティックエンジニアリングへ

Karpathyの要約によれば、バイブコーディングは脆弱性を入れてもよい免罪符ではない。ソフトウェアの責任は自分にある。エージェントは強力だがムラがあり誤りもあるため、仕様・テスト・権限・diffレビュー・隔離された作業空間といった工学的なガードレールが要る、という話だ。

Anthropicが2026年初頭に出したAgentic Coding Trends Reportも同じ向きを示す。単一のエージェントが一つのコンテキスト窓で順に進む形から、オーケストレーターが仕事を切り分け、専用コンテキストを持つ専門エージェントが並列で動き、結果をまとめるマルチエージェント構成へ移る、という予測である。

同資料は、長期実行エージェントが数日〜数週間かけてシステムを作り、人が手を付けにくかった技術的負債を減らせるとも書いている。Rakutenの事例として、Claude Codeが約1,250万行規模のvLLM(AIモデルをサーバーで動かすエンジン)関連作業を約7時間自律実行し、参照実装に対する数値精度99.9%を出したとある。これはAnthropicが選んだケーススタディであり、あらゆるリファクタリングがそう終わるという約束ではない。

ツールが実際に約束していること

元メモで例に挙がったVerdent AIとLovableは、向きが少し違う。一方は既存コードベースでエージェントを並列に回す側、もう一方は生成型アプリビルダーでブランドとコンポーネントの一貫性を保つ側だ。

Verdent AIは2025年9月23日のBusiness Wire発表で、VerdentとVerdent Deckを公開した。Verdentは計画・検証・反復を機能単位で進めるエージェンティックコーディングスイート、Deckは複数のVerdentエージェントを並列管理するデスクトップアプリだ。DeckはMac向けで、隔離されたエージェントセッションとGit worktreeをサポートすると述べた。公式ドキュメントも、エージェントごとに隔離されたワークスペースで動かし、結果を比較したうえでmainへrebaseする流れを説明する。リファクタリングガイドには、認証・API・ユーティリティなどモジュールを別ワークスペースに分けて並列処理するパターンがある。「バックエンドAPI移行とフロントエンドリファクタリングを同時に」という公式スローガンは確認できず、文書上は重ならないモジュールを並列に割り振る形に近い。

Lovableは2026年8月19日、デザインシステムをすべての有料プランで使えるようにしたとコミュニティに告知した。ブランドガイド・スクリーンショット・Figmaからシステムを作るか、既存システムをプロジェクトに接続してタイポグラフィ・色・余白・コンポーネントを引き継ぐ。ドキュメントはReactコンポーネントライブラリが中心で、接続・更新後にビルド設定やCSS・テーマプロバイダーを点検し、作業中の生の色やカスタムコンポーネントなどシステムからの逸脱を検知する。プロジェクトあたりのデザインシステム接続は最大一つだ。既存のnpmパッケージをデザインシステムとして包む機能はEnterpriseのみである。

数字が示すことと、示さないこと

Anthropicの要約はSocietal Impactsチームの研究を引用し、開発者が業務の約60%でAIを使う一方、完全に委任できると感じる割合は0〜20%にとどまると書いた。AIに仕事を渡す頻度と、検証なしで出荷する頻度は別物だ。

市場全体でVerdent・Lovable・マルチエージェントツールの利用率がどれだけ伸びたかは、この記事では確認していない。ツール順位自体はJetBrainsの調査など別のアンケートがある。ここではKarpathyの区分、Anthropicの予測、製品ドキュメントに書かれた機能だけを見る。

誤解しやすい点

バイブコーディングが「終わった」と読むのは誤りだ。Karpathyの枠組みでは下限が上がったあと、天井側をエージェンティックエンジニアリングが押し上げる構図である。プロトタイプや個人向けツールでは、バイブコーディングは今も有効だ。

「マルチエージェントは常に勝る」も、Anthropic自身の記述と食い違うことがある。別の箇所でAnthropicは、コンテキストが汚染されるとき、並列が効くとき、専門分化が効くときにマルチエージェントが勝ち、そうでなければ調整コストが上回ると整理している。本記事ではその細部パターンまでは掘り下げない。

Verdentを「移行専用製品」、Lovableを「あらゆるスタックのデザインシステム自動化」と見ると言い過ぎだ。確認できた範囲は、前者は隔離された並列エージェントとリファクタリングのワークフロー、後者はReact中心のデザインシステム接続である。

今後の注目点

  • Verdentのドキュメント・料金・Windows対応が発表後どう変わったか
  • Lovableのデザインシステム版更新が、接続済みプロジェクトにどれだけ実際に届くか
  • Anthropicや他の調査がマルチエージェントワークフローの採用率を別に測り始めるか
  • エージェントを並列実行するとき、チームがテスト・レビュー・マージのルールをどう置くか

出典

出典: karpathy.bearblog.dev

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