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Harnessとはどんな会社か:デプロイ自動化の企業がAIコーディングツールを買った理由

Harnessは、開発者が書いたコードのテストとサーバーへのデプロイを自動化する製品を売る会社で、10月8日にAugment Codeのコーディングエージェントを買い、コードを書く段階まで事業を広げた。

Harnessは会社の名前であり、製品の名前でもある。デプロイ自動化で名の知られた会社が、AIでコードを書いてくれるツールを買ったという話が出たので、この記事ではHarnessがどんな会社か、製品は何をして誰が使っているか、なぜ今回Augment Codeを買ったのかを順に整理する。

Harnessはどんな会社か

2017年に設立された米国のソフトウェア会社で、本社はサンフランシスコにある。自社の会社概要ページによれば、従業員は1,200人以上、拠点は23か所だ。創業者のJyoti BansalはAppDynamicsという会社を立ち上げてCiscoに売却した経歴を持つ。企業が必要なモジュールを選んで契約する形で、価格は営業との相談で決まる。

規模はTechCrunchの報道による。2025年12月にシリーズEで2.4億ドル(約380億円)を調達し、企業価値は55億ドル(約8,700億円)と評価された。創業者は、2025年のARR(直近の売上の勢いを1年分に引き伸ばした値)が2.5億ドル(約400億円)を超える見込みだと述べ、企業顧客は1,000社以上で、United AirlinesやMorningstarといった名前が挙がる。

製品は何をするのか

開発者がコードをリポジトリに統合すると、そのコードを自動でビルドしてテストし、サーバーに載せる必要がある。前半をCI、後半をCDと呼び、Harnessはこの全工程を1本のパイプラインにまとめる道具だ。とくにサーバーに載せる後半に力を入れている。

  • デプロイ方式を選べる。 新バージョンをまず数台のサーバーだけに出すカナリアのような方式が最初から入っている。各段階の検証を通らないと次に進まない。
  • 問題が起きたら自動で戻す。 PrometheusやDatadogといった監視ツールの指標を見て、異常が出れば前のバージョンにロールバックする。
  • 承認とポリシーをかける。 途中に人の承認を入れ、デプロイを検査するポリシーエンジンのOPAのルールをパイプライン全体に適用できる。
  • テスト時間を減らす。 変更したコードに関係するテストだけを選んで実行する。Harnessは顧客事例として「ビルド5倍速」「22分から5分未満」を挙げるが、数字はすべて自社ページのもので、JenkinsやGitHub Actionsと比べた値はない。

誰が使っているか

CI/CD全体で最も使われているのは別のツールだ。JetBrainsの2025年CI/CD調査(805人)では、組織での利用はGitHub Actionsが41%、GitLab CIが34%、Jenkinsが31%で、組織の32%は2つのツールを併用している。この調査にHarnessは選択肢として入っていなかった。(JetBrainsの原文は開けず、日本のメディアの報道に基づく。)

Harnessは対価を払って使う大企業向けの色が濃い。顧客事例のページにはUnited Airlines、Citi、Morningstarなどの大企業が並び、金融や航空のようにデプロイの統制や規制対応が重要な業種が多い。そこにある成果の数字はすべてHarnessが掲載したもので、たとえばUnited Airlinesはデプロイが75%速くなり、Citiはリリース時間が7分になったとされる。

ふつうどう使うか

典型的な構成は1本のパイプラインだ。最初のステージでビルドとテストを行い、次のステージで本番サーバーにデプロイし、間に承認を挟む。パイプラインは画面上でドラッグして組むか、YAMLファイルで書き、コードの統合時や決めた時刻に実行される。実際の作業は自社のサーバーに入れるDelegateというプログラムが行い、Harnessとは外向きのHTTPS接続だけを使うので、社内ネットワークに外部からの受信用ポートを開ける必要がない。

料金プランはFree(オープンソースのツールとコミュニティサポート)、Essentials、Enterpriseの3つだ。有料のEssentialsとEnterpriseは営業に問い合わせて見積もりを取る方式で、開発者あたりの価格は公開されていない。Essentialsはユーザー500人までで、モジュールを追加できない。

AIコーディングツールからHarnessを呼び出す道もある。HarnessはMCP(AIが外部ツールを使うための連携規格)に対応したサーバーをオープンソース(MIT)で公開している。個人アクセストークンをHARNESS_API_KEYに入れれば、パイプラインの照会や失敗原因の分析を対話で頼める。

  • Claude Code:claude mcp add harness -- npx harness-mcp-v2の1行で登録する。
  • Cursor:.cursor/mcp.jsonにサーバーを書く。
  • GitHub Copilot:VS Code 1.99以降で.vscode/mcp.jsonから接続する。BusinessとEnterpriseのプランでは、管理者が「MCP servers in Copilot」のポリシーを有効にする必要がある。
  • OpenAI Codex:HarnessのMCPドキュメントの対応一覧にはないが、スキル用リポジトリにCodex用プラグインがある。

では、なぜAugment Codeを買ったのか

一言でいえば、Harnessが担っていたのは「コードができたあと」の区間だったが、いまはAIがコードを書くので、その手前の区間も自分で握りたいということだ。

Harnessが10月8日に買ったのは、Augment Codeの一部の資産だ。コーディングエージェント基盤のCosmos、ターミナルエージェントのAuggie CLI、コード検索エンジンのCode Context Engine、関連技術で、開発チームも移る。会社全体を買ったわけではない。

Harnessの創業者の説明は2つある。第一に、AIが書いたコードは本番で動かすのに必要な文脈が足りないことが多い。第二に、AIのおかげでコードは早く出てくるのに、テストや検証、デプロイはそれほど速くなっておらず、ボトルネックがパイプラインの後ろに移った。Harnessはまさにその後ろを自動化する会社だ。

買ったものの使い道は具体的だ。Cosmosがチケットを受けてPRまで作ると、そのあとはHarnessの既存のエージェントが引き継いでビルドとセキュリティ検査、デプロイを行い、問題が出ればCosmosに戻す。Code Context Engineは、エージェントが既存のコード構造を読んでそれに合わせて書けるようにする部分だ。以前は、この流れの前半、つまりコードを書く段階を他社のツールに任せる必要があった。

以下は推測である。GitHubはコーディングツール(Copilot)とCI/CD(Actions)を1社で出している。TechCrunchがHarnessの競合として挙げる中にもGitHubとGitLabが入っており、コードを書く段階を持たないHarnessが不利になるのを防ぐ動きと読める。Harnessはこの解釈を示していない。

今使えるのはCosmos自体だ。チケットやバグ報告が入ると、エージェントが隔離された仮想マシンでコードとテストを書いてプルリクエストを開き、人間が承認してマージする。Harnessのデプロイ履歴データとの連携は「計画」、デプロイ結果をコード作業に戻すループは「次のステップ」と書かれており、上のなめらかな流れはまだ完成した姿ではない。買収額は公表されていない。

今後の注目点

Cosmosの価格が出るか、デプロイ履歴データとの連携がいつ出るか、そしてJetBrainsのような調査でHarnessが選択肢に入るかを見ておきたい。

円換算は10月19日の為替レート(1ドル≒158円)によるおおよその値である。

出典

出典: techcrunch.com

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